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今週半ばの小ネタ:朝の運動と夜の運動どっちが良い?歳を取ったらどんな筋トレが最適なの?コオロギのタンパク質はどこまで優秀か?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。 

  

 

  

朝の運動と夜の運動どっちが良いの?

運動って午前がいいの? それとも午後がいいの?」って問題は昔からあって、一般には朝の運動は代謝の改善に有効で、夜の運動は筋機能およびパフォーマンスをより高める可能性があるかも? とか言われてますが、既存のエビデンスはやや矛盾しているとこもありまして、まだ謎も多い段階なわけです。

 

 

で、新しい研究(R)もこの問題をあつかってまして、「男性と女性で運動時間のメリットは違うのか?」ってところを掘り下げてくれてて勉強になりました。

 

 

これは12週間のRCTで、普段からよく運動をしている男性(26人:平均46歳)および女性(30人:平均42歳)を対象に、筋トレ、インターバル、ストレッチ、有酸素運動を組み込んだ12週間のトレーニングを指示したんだそうな。そのうえで、

 

  • 参加者を、朝6時30分から8時30分までのトレーニングと、夕方6時から8時までのトレーニングに無作為に割り当てる。

 

  • トレーニングの前後で、パフォーマンス(有酸素パワー、柔軟性、上半身と下半身の筋力など)、みんなの体型などがどのように変わったかをチェックする。

 

って感じで、朝の運動と夜の運動におけるメリットの違いを調べてくれております。その結果をざっくりまとめると、以下のようになります。

 

 

  • 女性の場合
    • 朝に運動すると、夜の運動に比べて、脂肪の量(5%減 vs. 2%減)、お腹の脂肪(10%減 vs. 3%減)、血圧(10%減 vs. 3%減)をより大きく減少させた。

    • 一方で、夜の運動は、朝の運動よりも上半身の筋力(16% vs. 9%)、上半身の筋力(37% vs. 8%)、上半身の筋持久力(40% vs. 25%)をより大きく向上させた。

    • 夜の運動はまた、朝の運動よりも気分と満腹感を改善させた。

 

 

  • 男性の場合

    • 夜の運動は最高血圧を低下させ(12%減 vs. 3%減)、疲労を軽減し(55%減 vs. 0%)、脂肪酸化(6%増 vs. 1%増)をより大きく増加させた。

    • 朝と夜の運動は、身体パフォーマンスと体型を、どちらも同じように改善させた。

 

 

  • 男女とも、総コレステロール、LDL-C、グルコース、インスリン、CRP、IL-6、ストレスホルモンについては、朝と夜の運動によって違いはなかった。

 

 

というわけで、女性の場合は、朝の運動によって体脂肪、血圧、下半身の筋力が大きく改善し、夜の運動は上半身の筋力パフォーマンスが向上。男性は、夜の運動によって血圧が下がり、脂肪の酸化を増加させるのに効果的なのかもしれないわけですね。これが正しいのなら、運動になにを求めるかによって朝と夜の運動を切り替えるべきってことになりますね。

  

 

ちなみに、この研究では、カロリー摂取量、3大栄養素の比率、食事のタイミングなどを厳密にコントロールしているので、このタイプの研究としてはわりといい感じ。なんだけど、あくまで小規模試験なので、もうちょい知見を積まないとなーってとこではあります。

    

 

 

 

歳を取ったらどんな筋トレが最適なのか?

歳を取るほど筋肉が減りやすくなるので、高齢になるほど筋トレは必須。それでは、高齢者はどんな筋トレをすべきか? 歳を取ったら筋トレのやり方を変えるべきか? ってことで、そのへんを調べたメタ分析(R)が出ておりました。

 

 

これは、1,130人の高齢者(65~77歳)を対象にした14のヒト研究をまとめたもので、運動をしない人たちと比べて、どんな筋トレをすれば下半身の筋力や太ももや腰骨の骨密度を増やせるのか?ってところを検討しております。具体的には、

 

  • 週2~3回のトレーニング(頻度)、1RMの60~80%の負荷で8~12回の反復(量)、24~84週間の期間(平均40週間)という条件の違いで、筋肉と骨密度への影響はどう変わるか?

 

みたいなポイントを調べてくれてます。でもって、分析の結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • 高齢になってから筋トレを続けると、平均40週間で筋力が+25%、大ももと尻の骨密度が+3%ほど増加する(腰椎の骨密度は変わらない)
  • 証拠としての精度は、筋力については高く、大ももと尻の骨密度については中程度、腰の骨密度については非常に低い
  • 以上の効果の大きさは、年齢による影響を受けなかった。しかし、BMIが正常な参加者は、体重過多の参加者よりも筋力において大きな改善を示した(BMDにおいては改善しなかった)。

 

という感じでして、以上の話をふまえたうえで、研究チームはこんなトレーニング法を推奨しております。

 

  • 筋力を最適に増強するためには、変な筋トレをする必要はなく、従来どおりの一般的な筋トレをするのが一番。

 

  • 骨密度を最適に増強するためには、筋トレに加えて、ダンス、高負荷のエアロビクス、昇降運動のように、体重を支える骨への刺激が大きい運動を加える。

 

  • 具体的な成果を得るためには、少なくとも24週間はトレーニングを続ける。

 

  • トレーニングは週3回がベスト。

 

  • 1エクササイズあたり8~12回、1~2セット行うのがベスト。

 

  • 1RMの75-80%ぐらいの負荷で行うのがベスト。

 

みたいになります。まー全体的に穏当な結論でして、若い人も高齢者もそんなに違いはないかなーって印象はありますね(1回のセット数が少ないのと、骨に衝撃がある運動を重視するとこだけを除いて)。私もたいがいオッサンなので、この教えは守っていこう……。

 

 

 

 

コオロギのタンパク質はどこまで優秀か?

ここ数年「昆虫のタンパク質って優秀だよねー」って報告が続いてまして、バッタやコオロギの栄養は吸収が良いし、筋肉の発達にも良いかも?と言われ始めてるんですよ(まだ新しい分野なんでハッキリ言えないわけですが)。

 

 

でもって、新たな研究(R)は、「コオロギと牛肉を比べたら満腹感にどんな違いがあるのか?」ってところをまとめてくれてて勉強になりました。もともと、タンパク質が炭水化物や脂肪よりも満腹感を高めてくれるのは間違いないんですけど、その効果は果たして牛のタンパク質よりも上なのかって問題意識ですね。

 

 

今回の研究は20名の若い男性が対象で、

 

  1. みんなに25gのコオロギタンパク、または牛タンパクのどちらかをふくむドリンクを飲んでもらう(カロリーはどっちも200kcalぐらい)

  2. ドリンクを飲む前後に血液を採取し、血液中のアミノ酸と食欲ホルモンを評価。それと同時に、主観的な食欲の変化もチェック

  3. ドリンクを飲んでから300分後にパスタを自由に食べてもらい、実際の食欲もチェックした。

 

みたいになってます。すると、全体的にはコオロギのほうが優秀で、

 

  • 食後の空腹感はコオロギの方が小さい!(主観的な食欲と食欲ホルモンには違いなし)
  • 食後のロイシンも、牛よりコオロギの方が多かった(ロイシンは筋肉の発達に欠かせないアミノ酸で、これが多いということは筋肉の発達にも有利かも?と考えられる)
  • ただし、最終的に食べたパスタの量はどちらもほぼ同じだった。

 

という感じになってます。あくまで小さな違いではあるものの、もしかしたらコオロギのほうが食欲と筋肉に効くかも?ぐらいの結論ですね。まー、実際に食べたパスタ量に差が出てないのと、あくまで小規模な試験につき、どこまでコオロギが役立つかと言われればわからんのですが、今後に期待が持てるかなーという。まだコオロギパウダーとか高いので、もうちょい良い報告が増えて価格が下がってくれるとありがたいですが……。

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。