息子を亡くし、うつ病で苦しんできた高齢女性が取り戻した笑顔の意味

有料記事認知症と生きるには

松本一生
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 認知症になるということは、本人や家族にとって、つらく、悲しいことだと思います。ただ、認知症の人が歩んできた人生や状況によっては、ゆっくりと進行することによって「救い」ともいえることがあるのかもしれません。認知症の人とその家族に長く寄り添ってきた精神科医・松本一生さんが経験を通して解説します。

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「同じことをくりかえす」

 これまで認知症の行動面や精神的な症状について解説してきましたが、そのうち最も多くみられるのが今回のテーマ、「同じことをくりかえす」行動です。

 家族の誰かが「おじいちゃんは最近、なぜか買い物に出かけると同じ物を買ってくる」と言えば、「ああ、この人は直近の記憶が保たれなくなっているのだな」と、認知症の初期の「残念な」症状としてとらえ、早期発見、早期対応のために役立つ情報だと思うことでしょう。

 でも、「同じことをくりかえす」行動が出始めたことによって、それまで長年にわたって苦しんできた人が楽になることもあります。うつと認知症の違いもより理解できるように、今回も守秘を徹底して紹介します。

 私がその人に初めて会ったの…

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松本一生
松本一生(まつもと・いっしょう)精神科医
松本診療所(ものわすれクリニック)院長、大阪市立大大学院客員教授。1956年大阪市生まれ。83年大阪歯科大卒。90年関西医科大卒。専門は老年精神医学、家族や支援職の心のケア。大阪市でカウンセリング中心の認知症診療にあたる。著書に「認知症ケアのストレス対処法」(中央法規出版)など