獣医師はネコを掘り出した 出血熱拡大、原因探る現場のジレンマ

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竹野内崇宏
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 ネコの体はまだ、きれいだった。

 2022年3月、獣医師でもある岡林環樹・宮崎大学教授は、宮崎市内の民家の庭でスコップを手に、1匹のネコの遺骸を掘り出した。埋葬から40日が経っていたが、見た目には朽ちたような跡はなかった。

 岡林さんはネコをポリ袋で3重に包み込み、大学へ持ち帰った。

 ネコは解剖され、肝臓と脾臓(ひぞう)を摘出。血のりが残る口腔(こうくう)内も拭われた。三つの検体全てから、この家に住む80代女性を苦しめたのとまったく同じウイルスの遺伝子が見つかった。

 SFTS(重症熱性血小板減少症候群)のウイルス。ヒトにもネコにも同じウイルスが感染する。致死率は人で2割以上、ネコでは6割に達する感染症だ。

 ヒトに感染すると、嘔吐(おうと)、下血や発熱が起きる。エボラ出血熱などと同様の「ウイルス性出血熱」だ。医療関係者の中では「国内では最も重篤な感染症」「治療薬もワクチンもなく厄介」と恐れられている。

 女性は、病死した近所のネコの看病や埋葬時に素手で、血液や体液に触れてしまっていた。約10日後にだるさを訴えて宮崎大学医学部付属病院に入院、SFTS感染が判明した。意識が混濁するなど重篤な状態になったが、幸いにも回復した。

 感染の経緯を知った岡林さんは医師を通じて相談した。

「実は思っている以上に、ペットから私たちに感染している可能性もあるのでは」。岡林さんはそう感じていますが、啓発を続けることへの風当たりもあるといいます。記事後半でお伝えします。

 「ネコの体内からウイルスが見つかるかもしれない。掘り出して、確かめることができませんか」

 原因究明を願う女性の家族の…

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