何度もけいれん発作が起きる母 認知症による脳の萎縮が原因のときは

有料記事認知症と生きるには

松本一生
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 認知症のお年寄りで、けいれん発作を起こす人がいます。認知症の原因となっている病気が進んで脳が変化することが、影響することもあるそうです。家族や周囲にできることはあるのでしょうか。認知症の人と家族に寄り添ってきた精神科医の松本一生さんがコラムで解説します。

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 認知症には脳が少しずつ変化して小さくなる(萎縮する)アルツハイマー型認知症や、脳内の血管が詰まって微小な脳梗塞(こうそく)ができ、その先の血液の流れが滞ることで悪化する血管性認知症などがあります。

 いずれの場合も、脳の細胞が変化する病気なのです。病気が進行して重くなるほど脳の変化が著しくなるため、結果として、人によっては健常な脳の場合には起きなかった「けいれん発作」が起きるようになります。

 今回はそのけいれん発作が起きた時にどう対応するかについて考えましょう。今回も個人情報の守秘に努めます。

突然、全身を震わせる母

 アルツハイマー型認知症でケアを受け始めてから16年になる田坂雪乃さん(仮名、89歳)の毎日は、ベッドで目覚めることからはじまります。田坂さんが歩けなくなって4年、ベッド上での生活が続いてきましたが、同居する息子の祐樹さん(仮名、66歳)と妻の敬子さん(仮名、62歳)がこれまで献身的に介護してきました。

 敬子さんはこの16年、雪乃さんに寄り添い、夫婦で旅行することもなく、自分のしたいことも控えながら夫の母親の介護に身を捧げてきました。ところが5年前、その敬子さんがパーキンソン病と診断され、徐々にですが体が動きにくくなり、現在では手足の震えも激しくなって、祐樹さんのケアを受けながら毎日を送っています。

 それでも祐樹さんは母雪乃さんの在宅介護を諦めることなく、介護保険も最大限に活用して、雪乃さんを訪問リハビリ訪問看護、ホームヘルパーとの連携の中で支えてきました。雪乃さんは昨年の11月まで、幸い急激な悪化もなく安定し、褥瘡(じょくそう)(床ずれ)などを起こすこともなく、日々を過ごしていました。

 ところが11月半ばの急激に外気温が下がった日の深夜、とつぜん「それ」は起こりました。「今日も安定して寝ているかな」と、祐樹さんが妻の介護を終えて母親の寝室をのぞいた時、雪乃さんは全身を震わせていたのです。

■救急搬送、けいれん止める薬…

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松本一生
松本一生(まつもと・いっしょう)精神科医
松本診療所(ものわすれクリニック)院長、大阪市立大大学院客員教授。1956年大阪市生まれ。83年大阪歯科大卒。90年関西医科大卒。専門は老年精神医学、家族や支援職の心のケア。大阪市でカウンセリング中心の認知症診療にあたる。著書に「認知症ケアのストレス対処法」(中央法規出版)など