第4回「もう限界」心身を削って月収14万円 官製ワーキングプアの現実

有料記事この差はなんですか? ジェンダー不平等の現在値

伊藤恵里奈 阿久沢悦子
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 「もう限界だ」。藍野美佳さん(54)は2021年春、広島県内の自治体で、約8年間勤めた婦人相談員を辞めた。

 DV(家庭内暴力)に苦しむ女性たちの相談を受け、支援する仕事には使命を感じていたが、あまりの待遇の低さに追い詰められた。

 岡山県出身。結婚して3人の子をもうけたが、自身も23年間にわたり夫からDVを受けていた。岡山市の民間シェルターで支援を受けて離婚し、シングルマザーとなった。

 「自分と同じ境遇の女性たちの力になりたい」と考え、その後、3年間、そのシェルターで働きながら、DV被害者の支援を学んだ。

 職場を探し、ようやく見つけたのは、隣の広島県内にある自治体の非正規職だった。

 迷っていた藍野さんの背中を押したのは子どもたちだった。

 「かつての私たちのように、DVでつらい思いをしている人たちを助けてあげて」

 13年夏、車で2時間あまりの距離にある二つの都市を行き来する生活が始まった。

「首を絞められたことがあるか」 必ず聞いた

 厳しい仕事にもかかわらず、低い待遇に追い詰められていく藍野さん。仕事にはやりがいを感じていましたが、心身は限界に近づいていきます。

 何がDVにあたるかという啓…

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    犬山紙子
    (エッセイスト)
    2023年3月9日14時10分 投稿
    【視点】

    DV被害者やひきこもり支援という、専門性の必要な人の尊厳を守るために重要な仕事が、非正規の女性の生活の苦しみと引き換えに成り立っていることはどう考えてもおかしい。 このままでは生活できないと辞める女性が増えた時、困るのは支援が必要な人

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