寄生虫は、人類とともに長い歴史を歩んできた。病原体としての側面が注目されてきたが、宿主(しゅくしゅ)の免疫から巧みに逃れているものもいる。その仕組みを寄生虫から学ぶことで、新たな病気の治療法につながる可能性が見えてきた。
えさはたっぷりで、攻撃を受ける恐れは少ない――。寄生虫は、こんな快適な環境を自ら作り出すことができるらしい。
東京大の後藤康之教授らは、貧血や肝臓のはれを起こし、治療しなければ9割以上が死に至る「内臓型リーシュマニア症」の仕組みを研究している。
この病気を起こすリーシュマニア原虫は、サシチョウバエという昆虫によって媒介される。原虫は、マクロファージと呼ばれる免疫細胞に寄生する。寄生された細胞は、赤血球をどんどん食べるようになる。
がんの治療薬開発につなげたい
「自分の細胞だから食べてはいけない」という認識に必要な分子が抑えられてしまうからだ。寄生虫は免疫からの攻撃を逃れ、赤血球という栄養豊富なえさを手に入れる一方で、宿主が貧血になる。
後藤さんらは、この仕組みを…
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