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今週半ばの小ネタ:ガムでストレスに強くなる? オ◯禁でメンタル悪化? あなたが他人との雑談で不安になりがちな理由とは?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

ガムはストレス対策のトレーニングになるのでは?説

ガムを噛むだけでもストレス改善になるのでは?みたいな話を、かつて書いたことがありました。「ものを噛む」ってのは割とストレス対策として有効で、ガムでもストレスホルモンが減ったりするんですよ。

 

 

で、新たなデータ(R)も「噛む」に関する話で、

 

  • 噛む力が強い人はストレスに強い!

 

って結論になってておもしろかったです。これは静岡県立大学などの先生が行った研究で、18~27歳の女性80人が対象。実験では、まずみんなにの噛む力をチェックし、全体を噛む力が強い人と弱い人に分類したそうな(「XYLITOL咀嚼チェックガム」ってのを使ったらしい)。

 

 

そのうえで、全員に人前での5分スピーチと暗算を指示してわざとストレスをあたえてから、参加者のストレスレベルをチェックしたそうな(自律神経を調べたり、α-アミラーゼ活性を調べたりしたらしい)。

 

 

すると、結果はこんな感じになりました。

 

  • 普段のストレスや抑うつのレベルについては、噛む力が強かろうが弱かろうが関係はなかった。

 

  • ただし、わざとストレスを与えられた後は、噛む力が強いグループのほうが、いくつかのストレス反応が低かった。

 

ということで、「噛む力が強い人はストレスにも強い!」と明確に言える感じではないものの、全体的に見れば、やはりよく噛める人ほどストレスを感じにくいとは言えそうであります。

 

 

横断研究につき因果関係は不明ですけど、過去の研究などを見ても、よく噛みながら食事をする人ほど交感神経がたかぶりにくい印象はありまして、「普段からガムなどを噛んでおくとストレス対策のトレーニングになるかも?」とは思いますね。

 

 

 

オ◯禁、メンタルに悪いんじゃないか説

ちょっと前に「自分磨きにはメリットが多い!」なんて話も書いたワタクシ。当然、一部で流行りの「オ◯禁」には、賛同しない立場を取ってるわけです。

 

 

でもって、新たな研究(R)も「オ◯禁」にまつわる話で、結論から言っちゃうと、

 

  • 下手にオ◯禁に近づくとメンタルを病むぞ!

 

って感じです。オ◯禁はメリットがないどころか、実はメンタルに悪いんじゃないか、という話ですね。

 

 

これは417人の男性を対象にした調査で、そのうち257人がオ◯禁を試したことがあったそうな。そのうえで、全体に抑うつ症状や不安のレベルを尋ねたところ、

 

  • オ◯禁を試したことがある人、NoFapに参加したことがある人ほど、自己否定的な感情を抱いたと報告した。

 

  • NoFapに参加した人ほど、抑うつ症状、不安、EDを経験していた。

 

って傾向が見られたらしい。NoFapってはじめて聞いたんですけど、オ◯禁を推奨するアメリカ最大のグループで、「ここに参加すると人生の満足度が上がるだけじゃなくて、精神状態もがっつり改善するよ!」と主張してるそうな。すごいですねぇ。

 

 

研究チームいわく、

 

オ◯禁や、それに関連するコミュニティは良い選択肢ではない。そのようなものに手を出すなら、あなたの心配の根底にあるうつ病や不安に焦点を当てる方が、より役に立つだろう。

 

とのこと。あくまで観察研究なので、これが本当にオ◯禁のデメリットなのかはわからんですが、ちょっと心配になるデータではありますな。

 

 

 

あなたが他人との雑談で不安になりがちな理由

友人との仲を深めるには会話が大事!ってのは常識ながら、意外と雑談を苦手とする人は多いもんです。かくいう私もスモールトークは苦手なタイプでして、なんらかの目的がない話には、ぎこちなさを感じることもしばしばだったりします。

 

 

そこで、新しく出てきたデータ(R)は、

 

  • 雑談がうまくいかないときは、みんな自分を責めがちだから気をつけて!

 

って結論になっててためになりました。

 

 

これは768人の男女を対象にした研究で、3種類の実験を行ってます。ざっくり申し上げますと、

 

  1. 参加者に「友人や同僚と比べて自分の会話力をどう思います?」について調査し、ついでに他の活動でのパフォーマンスもチェックする。

  2. 「みんなが会話中にどれぐらい不安感じるか?」や「自分の会話力についてどう思っているか?」などを調べる。

 

みたいになります。要するに、会話中に不安になりやすい人は、そのときにどんなことを考えているかを調べたわけです。

 

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • たいていの人は、雑談がうまくいかないときには、「自分のコミュ力が低いのが原因だ!」「なんて自分は会話が下手なんだ!」みたいに思いがち。

 

  • たいていの人は、雑談がうまくいったときには、「相手のコミュ力が高かったからだ!」「たまたま共通する趣味があったからだ!」みたいに思いがち。

 

だったそうです。参加者たちは、会話がうまくいかないときは自分のせいにするし、会話がうまくいったときは逆に周囲のおかげだと考えるわけですね。ご存じのとおり、人間ってのは、自分の能力を過大評価しがちな生き物なんですけど、会話については違うってのがおもしろいですね。

 

 

で、このような現象が起きる理由を、研究チームは以下のように推測しておられます。

 

  • スポーツとかビジネスとかだと、「この活動は成功した!」と言える客観的な基準があるけど、会話の成功には相手の意見が関わるからでは?

 

雑談の目的ってのは、シンプルにその場にいる人たちがみんな楽しめるかどうかなので、そのぶんだけ成否の判断基準が増えてしまい、これが自分のコミュ力を批判する方向に働くのではないか、という判断ですね

 

 

つまり、この実験から教訓を得るならば、

 

  • 雑談では自己を否定するバイアスが働きがちだから、会話のあいだに不安になったときには、バイアスの働きを意識するといいよ!

 

って感じになるでしょうね。これは私もよく飲み込まれがちなバイアスなので、肝に銘じておこう……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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