誤嚥性肺炎を防ぐには 認知症で筋力が低下し、向精神薬の影響も

有料記事認知症と生きるには

松本一生
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 誤嚥(ごえん)性肺炎って、聞いたことがありますか。高齢の家族が熱を出したときに、よく聞きます。認知症ならではの理由もあるようです。歯科医師でもある精神科医の松本一生さんが、誤嚥する背景やリスクを減らすケアの方法をコラムで解説します。

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 認知症によって脳が少しずつ小さくなる(萎縮する)と、さまざまなことができなくなってきます。日常生活における記憶や判断力の低下など、知的な面はもちろんですが、命を守るための体の働き(機能)も衰えます。「対応編」の最終回である今回のテーマは、「食べ物を間違って気管のほうに吸い込んでしまう誤嚥」について、どのような防止策があるかを考えてみましょう。

食べもの以外の原因も

 15年ほど前に介護職の人と話をしていると、次のようによく聞かれたものです。

 「先生、私が担当していたアルツハイマー型認知症の人は、どんなに食事の時に注意して介護をしても誤嚥性肺炎をくり返します。耳鼻科や歯科で嚥下(えんげ、のみ込み)の専門医をしているところで、内視鏡を使ってどの程度、食道にのみ込むべきものが気管のほうに入ってしまうかを見る試験をしてもらいました。『ごっくん』とのみ込むときには力があるのに、なぜこの人は誤嚥性肺炎ばかり起こすのでしょうか」、と。

 現在でも介護家族から同様の質問を受けます。確かに「誤嚥」というのは本来なら食道のほうに向かってのみ込むべきもの(食塊)が、間違って気管に入ってしまって起きるのですが、もう一つ大きな原因があります。

■口の中の雑菌が唾液といっし…

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松本一生
松本一生(まつもと・いっしょう)精神科医
松本診療所(ものわすれクリニック)院長、大阪市立大大学院客員教授。1956年大阪市生まれ。83年大阪歯科大卒。90年関西医科大卒。専門は老年精神医学、家族や支援職の心のケア。大阪市でカウンセリング中心の認知症診療にあたる。著書に「認知症ケアのストレス対処法」(中央法規出版)など