室温104度のサウナ室で、飯田祐馬さん(32)の「ショー」が始まった。
レモンのアロマ水を球状に凍らせた「キューゲル」をストーブに置くと、溶ける氷から蒸気が上がった。
「1回目、タン塩です」
飯田さんは「熱波師」。テーマを設け、タオルでサウナに熱い風を起こす。
この日の演目は「焼き肉」。「ジンギスカン」の曲に合わせて、縦に、横に、タオルを振る。蒸気と熱気が一気に広がり、レモンの清涼感ある香りに包まれる。
「次はくんせいです」
新たなキューゲルが置かれ、焼き肉屋のスモーキーな香りでいっぱいに。
「最後に背中を向けてください」。おけの水をすべてストーブにかけると、大量のスチームで室内の体感温度は最高潮に達した。
「熱波師として多くの人を笑顔にする。それが僕なりの恩返しなんです」
元々ベーシストだった。2011年に加入したバンドは、13年にメジャーデビュー。すぐに人気に火がつき、国民的アニメの主題歌も担当した。日本武道館や海外での単独公演もこなし、満員のライブ会場を沸かせた。
ただ、私生活でスキャンダルが報じられたことも。バンドの人気が高まる一方で、自分の演奏技術に自信を持てず、精神的に追い詰められていった。「メンバーの足を引っ張っている」。そんな思いが募ってゆく。
固まった指先、診断は「うつ病」
ある日のライブ中、ベースを…
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