食事や睡眠ままならず 子どもの「付き添い入院」、NPOが実態調査

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河原夏季
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 病気やけがで子どもが入院した際、親も病院に泊まり込んでケアをする「付き添い入院」。睡眠や食事もままならないなど、劣悪な環境で入院が長期にわたるケースや、看護師らが対応すべきケアも親が担っている実態が明らかになった。1日、調査をしたNPO法人が記者会見を開き、「親が安心して付き添うための環境整備がほとんど行われていない」と訴えた。

 調査は、病児を育てる家族を支援するNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」(東京都中央区)が、昨年11~12月にインターネット上で実施。2018年1月以降に泊まり込みや面会で18歳未満の子の入院に付き添った保護者が対象で、3643件の回答を得た。NPOによると、大規模調査は初めて。厚生労働省も21年に同種の調査を実施しているが、十分な回答を集められなかった。

 2週間以上の付き添いを経験した保護者は6割に達した。2年という長期入院もある。子どもの世話やケアに費やした時間は、1日6時間以上が8割。21~24時間と長時間に及ぶケースもあった。

 生活環境では、半数が子どもと同じベッドで眠り、3割が病院でレンタルする簡易ベッドを使っていた。夜間に子どもの世話や看護をした人は9割を占め、熟睡できていないことが多かった。簡易ベッドは寝返りも打てないような狭い幅のため、「腰痛が悪化した」との声も寄せられた。

 食事は院内コンビニや売店で調達する人が半数以上にのぼり、「1、2食しか食べられない」人も3割いた。

 付き添い中に、半数が体調を崩したと答えたという。

 公的医療保険制度上、入院患者の世話は看護師らが担うものとされ、人件費も診療報酬でまかなわれる。だが今回の調査では、8~9割がおむつ交換などの排泄(はいせつ)ケアや入浴介助、服薬のほか、人工呼吸器の管理やたんの吸引といった医療的ケアも看護師の代わりにやっていた。

 NPOの光原ゆき理事長は「子どもの安全に関わることも親が担っていて驚いた。命に関わる問題なので早急に改善していただきたい」と述べた。

 NPOは同日、状況改善の要望書を厚生労働省とこども家庭庁に提出した。(河原夏季)

過酷な付き添い環境 退院後に体調を崩す親

 東京都内の女性(45)は昨年12月下旬から、病院2カ所で計1カ月ほどの付き添い入院を経験した。長女(5)が、のどの奥にうみがたまる疾患を発症。「ママに一緒にいてほしい」という希望を優先し、面会のみ可能な大部屋ではなく、寝泊まりができる個室を選んだ。

 最初の病院では夫(38)も日中に面会でき、女性は仮眠を取って体を休められた。だが、転院先の病院では入院に付き添う親以外の面会は認められなかった。「夫は子どもに会えず、私は病院に軟禁状態でした」と女性は振り返る。差し入れを受け取ることもできなかったという。

 娘のメンタルケアに食事やト…

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    山下剛
    (朝日新聞横浜総局次長=医療的ケア児)
    2023年6月2日10時52分 投稿
    【解説】

    2年ほど前に、この問題で厚生労働省を取材したことがあります。そのときにびっくりしたのは、担当者が「子どもへの入院付き添いはあくまで『例外的な措置』」というスタンスだったことです。 (2年前の記事はこちらです) 子どもの入院付き添い「

    …続きを読む