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今週半ばの小ネタ:ピアノを練習すると脳がぶ厚くなる、気分が浮き沈みしやすい人、良いアイデアを思いつく昼寝の仕方


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

ピアノを練習すると脳がぶ厚くなるぞ

音楽は脳に良い!ってのは割りと確かな話で、過去にも「楽器を熱心に練習していると脳の構造が変わるよー」とか「音楽を学ぶと語学や数学の成績まで良くなるんじゃない?」といった報告が出ております。楽器の演奏ってのは複雑な行為なので、良い脳トレになるんじゃないかと言われてるんですよね。

 

で、新たな試験(R)も「音楽で脳が改善するか?」を調べていて、ためになりました。

 

これは132人の高齢者(平均69歳)を対象に行った研究で、音楽のレッスンを受けたあとに起こる脳の変化を調査してます。参加者は「音楽レッスングループ」と「音楽勉強グループ」に割り付けられ、前者にだけ1週間のピアノレッスンを指示したんだそうな。

 

ピアノの練習は1回最低30分で、ペースは週に5回。他方で「音楽勉強グループ」は音楽の文化を学ぶコースに参加させ、週1時間のレッスンで音楽理論と鑑賞を学んだとのこと。そのうえで、6ヵ月後に脳がどう変わったかを見たら、結果は以下のようになりました。

 

  • 音楽レッスンの種類(ピアノと音楽の勉強)にかかわらず、すべての参加者は、脳のいくつかの領域で灰白質が増加した。

 

  • ピアノのレッスンを受けた人はワーキングメモリーが有意に向上したが、言語ワーキングメモリーは向上しなかった。

 

  • 音楽レッスンの受講回数、宿題に費やした時間、睡眠時間は、ワーキングメモリの改善と正の相関があった。

 

ということで、ピアノの練習だけでなく、音楽を勉強した人にも、脳が大きくなる現象が確認されたらしい。ここで増加した4つの灰白質は、いずれも高度な認知機能に関わってまして、これが事実なら非常にうれしい話ですね。

 

まぁこの研究は、「なんにもしない」ってグループをふくんでないし、サンプル数も少ないしで、かなり限定的な結論なのは間違いないところ。そのへんは注意したいところですが、過去のデータもあわせると、音楽が認知機能の改善につながる可能性は高そうなので、積極的に触れていきたいっすね。

 

 

 

気分が浮き沈みしやすいのはどんな人?

「神経症的な性格は気分の浮き沈みと関係するか?」ってのを調べた研究(R)が出ておりました。神経症的なら気分のアップダウンが激しくなるのは当然では?と思われるでしょうが、実は近年の研究では、「神経症傾向って気分の変動とはあんま関係なくない?」って見解も増えてきてるんですよ。

 

研究チームいわく、

 

過去の研究では、神経症な人ほど日常生活でネガティブな感情を経験しやすいと、指摘されてきた。しかし、近年では矛盾した報告をする研究が新たに出てきており、本当に神経症的な傾向が感情体験の変動性の増大、すなわち気分の変動と関連しているかについては意見が分かれている。

 

とのこと。「神経症=気分が変わりやすい」ってのは当然のようですけど、実際にはまだまだ結論が出ていないテーマなわけですね。

 

そこでチームは、2,500人以上の人々にネガティブな感情の変化について質問。ここにベイズ統計学のアプローチでシミュレーションを行ったうえで、13の縦断的データセットを再検討したんだそうな。そこでどんな結果が出たかと言いますと、

 

  • 神経症的な人は、確かに否定的な感情の変動が大きい

 

だったそうです。ちょい拍子抜けながら、従来の説があらためて支持された形であります。

 

研究チームいわく、

 

神経症のスコアが低い人の生活では、否定的な感情はほとんど起こらないが、神経症のスコアが高い人は、日常生活で否定的な感情を有意に多く報告する

 

神経質レベルが高いということは、自己批判が強く、外部からの批判に強く反応し、「私は十分ではない」と頻繁に感じることを意味する。神経症的な傾向が強い人は、概して世界を否定的に見がちで、ちょっとした意見の相違が不釣り合いな怒りを引き起こすこともある。そのため、当然のことながら、うつ病や不安症といった精神的な問題を経験する可能性も高い。

 

とのこと。「それはそうでしょうねー」って結論ですが、統計を見ると、約8人に1人が抑うつ的な性格特性を持っているようなので、心当たりのある方はご注意ください(私もそうですけど)。

 

 

 

 

良いアイデアを思いつく昼寝の仕方とは?

「寝入りばなに良いアイデアが浮かぶ!」って体験をしたことがある人は多いでしょう。睡眠と覚醒の間を漂うぼんやりした状態は、創造性が爆発しやすいタイミングとして、昔から研究が進められているんですよ。

 

で、新らしい研究(R)のそのひとつで、「良いアイデアを思いつく昼寝の仕方とは?」ってあたりを調べてくれてます。具体的には、49人の参加者を4つのグループにわけた試験で、そのうち1つのグループには、以下の要領で昼寝をしてもらったそうな。

 

  1. 参加者に45分の仮眠を取ってもらう。

  2. 寝る前に「どんなことでもいいので、『樹木』について考えてください」と指示する。
  3. 参加者の睡眠をモニタリングし、深い睡眠に入りそうになったらジャマをして(「いまの思考は?」みたいな音声が流れたらしい)、浅い眠りを維持させる。

  4. 仮眠が終わったら、みんなに「樹木」をテーマにしたオリジナルのストーリーを考えてもらう。

 

要するに、特定のテーマについて考えながら浅い眠りに入れば、そのテーマに関する創造性が上がるんじゃないか?と考えたわけですね、

 

すると、結果はこんな感じになりました。

 

  • 『樹木』について考えつつ昼寝をした人は、起きていた人に比べて78%も創造的なストーリーを思いついた。
  • 『樹木』について考えずに昼寝をした人も、起きていた人に比べて43%創造性が高かった。

 

事前にテーマについて考えたグループはもちろん、普通に昼寝しただけでも創造性は上がるみたいですね。

 

研究チームいわく、

 

人間の脳は、睡眠状態、あるいは半睡眠状態において、より広範囲なエリアとつなぐことができ、この状態は、専門的には催眠状態として知られている。この脳の状態にアクセスすれば、普段の生活でより創造的になれる。

 

とのこと。つまり、この研究を実践に活かすなら、

 

  1. いま抱えている問題について、1分ぐらいなんとなく考えてみる。

  2. そのまま15〜20分ぐらい寝て、浅い眠りに入ったところで起きる。

 

みたいなやり方をくりかえしてみると、良いアイデアが浮かぶかもしれません。あんまり寝すぎると深い睡眠に入っちゃうので、その前に起きるのがポイントって感じでしょうね。

 


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