「血友病」の治療、新たな薬が続々と 患者・家族のQOL改善に期待

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野口憲太
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 血が止まりにくいなどの症状がある「血友病」の治療が近年、進展をみせている。新たな薬が複数登場し、患者の生活の質(QOL)の向上につながると期待されている。

 血友病は出血がなかなか止まらなくなる、主に遺伝性の病気で、患者はほぼ男性だ。19世紀の英ビクトリア女王が保因者で、血縁があるスペインやロシアの王家の男児が発症したことでも知られる。

 体内では血を止めるため、「血液凝固因子」という12種類のたんぱく質などが機能する。このうち「第8因子」がはたらかないのが血友病Aだ。患者は国内に約5800人いる。このほか、第9因子がはたらかず、国内に約1300人の患者がいる血友病Bもある。

 患者の生活の質に大きな影響を与えるのが、出血を繰り返すことによる関節障害だ。

 関節内の出血が「滑膜炎」とよばれる関節の炎症につながる。繰り返すと、軟骨や骨がボロボロになり、曲がる範囲が狭まったり、強い痛みが伴ったりする。

「定期補充」広がる

 血友病の治療は、転んだときなどに、血液凝固因子を静脈注射で補う「出血時補充療法」が中心だった。ただ、特に重症患者だと、出血時の注射だけでは関節障害になってしまう場合もあった。

 そこで近年、ふだんから定期的に注射をする「定期補充療法」が広がった。これによって多くの患者が、ほかの人と同じような生活を送れるようになっている。

 血友病の治療に詳しい、自治医科大の大森司(おおもりつかさ)教授によると、2007年に発表された論文で、関節障害のリスクが下がると科学的に示され、一つの契機になったという。

 効果が長く続くものが開発されるなど、治療薬の改良も進んだ。大森さんは、「この10年で、投与回数が減らせる新しい治療薬の開発も進み、関節障害を予防するという考えに基づく定期補充療法の有用性が広く認識されている」と話す。

「画期的」な薬や、遺伝子治療薬も

 注射した凝固因子を異物として排除しようと、体内の免疫のしくみがつくる物質(インヒビター)が出てしまい、従来の注射が効きにくい人もいる。

 そんな患者にも効果が期待できるのが、中外製薬が開発した「ヘムライブラ」だ。日本では18年に承認された。

 第8因子の本来のはたらきは、別のふたつの凝固因子(第9因子と第10因子)をつなげて活性化させること。ヘムライブラは、同じ「つなげる」機能が発揮できるよう設計されている。

 共同研究に携わった奈良県立医大の嶋緑倫(しまみどり)教授は「投与方法はおなかなどへの皮下注射で使いやすく、注射の頻度も少なくできる。インヒビターのある人はもちろん、ない患者さんにとっても画期的な治療薬になった」と振り返る。

 近年さらに、血友病患者に対する遺伝子治療薬が米欧で承認されるなど、進歩は続いている。

 血友病Bに対する、米CSL…

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