妊娠・出産で乳がんリスクが減る訳 変異が少ない細胞に置き換わる?

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桜井林太郎
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 乳がんは女性ホルモンのエストロゲンの増減が、発症リスクに大きく影響することが知られている。京都大や東京医科歯科大、慶応大などの研究チームは、乳がんの起源となる遺伝子変異を調べるため、乳腺細胞に変異が蓄積する速度をゲノム解析技術を使って推定した。その結果、蓄積速度が妊娠・出産、閉経など女性特有のイベントと関係が深いことが明らかになった。

 研究チームは、20~80代の21人の女性の乳腺上皮にある正常な細胞69個で変異の蓄積数を調べた。その結果、閉経前は蓄積速度が年19・5個だったのが、閉経後は年8・1個と半減していた。

 エストロゲンが細胞の遺伝子に傷をつけたり、細胞分裂を促したりすることで、変異の蓄積にかかわっている可能性はこれまでの研究でも示唆されていた。実際に、初経が早いことや閉経が遅いことが乳がんの発症リスクを上げることは疫学調査でわかっている。

 今回の結果は、閉経でエストロゲンの量が減って細胞が暴露されにくくなり、蓄積速度が大きく減ったと考えられるという。

 ところが、研究チームが驚いたことに、出産を経験した女性では変異の蓄積数が減少していた。1回の出産で54・8個も減っており、約3年分の変異の蓄積が解消される計算になる。

 妊娠中はエストロゲンの量が増えるため、ふつうに考えれば変異数は増えるはずだ。

 研究チームは、妊娠・出産に伴い、乳腺細胞が変異を蓄積していない細胞に置き換わったのではないかと考えた。授乳期間中は乳腺が増殖して大きくなるが、終わると急速に小さくなる。このときに乳腺細胞がアポトーシス(細胞死)を起こし、脱落していったと見立てた。

 ならば、どうやって新しい細胞と置き換わるのか。

 乳腺上皮の中で休眠していた…

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