第1回一家4人、エアコンは6畳間だけ 身を寄せ合って眠る公営住宅の夏

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A-stories「適温で暮らしたい 気候危機と夏の住まい」

 3DKに、エアコンは一つ。一家4人、夜はその部屋に集まって、横になる。

 シングルマザーの女性(43)が、いまの都営住宅に引っ越したのは3年前の秋のことだ。

 築40年あまり。家賃は共益費込みで約3万円で、前に住んでいたアパートの半分以下に抑えられた。

 ただ、戸惑ったことがある。

 エアコンが一つもついていなかったことだ。部屋は6階の角部屋で、仕事から帰る時間は西日も厳しい。風通しもよくない。

 「冬は上からかぶればいいけど、夏はそうもいかない。夜でも灼熱(しゃくねつ)です」

 とても我慢できず、量販店でエアコンを買った。工費も含めて7万円ほどだった。

 大学生の長男(19)、高校生の次男(17)、中学生の長女(13)。3人の子どももずいぶん大きくなった。

息子たちの隣室には届かぬ冷気

 エアコンをつけた部屋は、女性と長女が寝室として使っており、長男と次男は、壁で隔てられた隣の部屋で寝ている。しかし、そこまではエアコンの冷気が届かず、息子2人は下着だけで過ごしても暑いという。

 夏の夜は、エアコンがある寝室に4人が集まり、二つ並べたマットレスに2人ずつ身を寄せ合って寝る。

 「私よりみんな背丈が大きいし、年齢も年齢なのに」と女性は苦笑いする。

 廊下の先にあるダイニングやキッチンも、暑い。エアコンがある部屋の入り口付近に扇風機を置いて、冷気をまわせないか工夫しているが、あまり効果は感じられない。

 エアコンを増やすことが難しい事情もある。

 もともと、3DKのうち、室…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年7月28日15時12分 投稿
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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2023年7月28日12時0分 投稿
    【視点】

     記事でも言及されているように、築年数が古い公営住宅で暮らす高齢者のなかには、電気代を気にしてエアコンを使わない人が少なくありません。  東京都・光が丘団地の高齢者ボランティア団体の協力を得て、団地やその周辺で暮らす60~90代の高齢者にア

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