穏やかでよく寝る子。まるでお地蔵様。
加藤真心(まこ)さん(13)が生まれたとき、母さくらさん(42)はそう思った。
ところが生後3カ月を過ぎたころから、二つ上の姉と違う様子が気になり始めた。
首がすわらない。ミルクの飲みが悪く、布団を足で蹴飛ばすこともしない。
「病気なのかも」。不安に思ったが、「成長がゆっくりなだけ」と自分に言い聞かせた。
6カ月健診で「首がすわらない」と伝えると、医師の顔から笑みが消えた。
真心さんの体に触れ、医師は言った。
「紹介状を書くので、すぐに大きな病院で精密検査をしてください」
2010年9月27日、頭部のMRIや血液検査を受け、夕方に結果が出た。医師から「お父さんも呼んでください」と言われた。
都内の会社に勤めていた悠太さん(45)に急いで電話し、病院に来てもらった。
その日の夜、真心さんを抱いたさくらさんと悠太さんを前に、医師は1枚の紙を差し出した。
「筋ジストロフィーの疑い」と書かれていた。「進行性の病気です。立つことや歩くことはできないでしょう」
こまかなやりとりは覚えていないが、「覚悟してください」と言われたことを覚えている。
病室で真心さんを寝かしつけ、交代でそれぞれの両親に電話をかけた。
さくらさんが実家に電話すると、母(70)が出た。
「筋ジストロフィーの疑いと言われた」と告げると、一瞬の沈黙のあと、母は言った。
「あなたは大丈夫なの?」…
【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら