第5回たっくんはゆうとが大好きだった 窓を隔てても遺骨でもそばにいたい

有料記事想いをつづって

島脇健史
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 ゆうとの家の明かりがつくのはいつも夜。でも、今日は夕方についた。

 「帰ってきてるかもしれん!」。小学1年生のたっくんは自宅を飛び出し、はすむかいのマンションに向かった。

 ゆうとの家は1階。たっくんは塀を乗り越えてベランダから訪ねた。

 やっぱりいた!

 たっくんはゆうとの家のベランダに座る。感染防止のため、家の中には入らない。

 窓越しに一緒にテレビを見ては笑い合った。窓1枚隔てていても、そばにいたかった。

 入院しているゆうとの外泊が認められ、自宅に帰る日には、暑い日も、寒風吹きすさぶ日も、こんな風に必ずたっくんが気づき、飛んでいった。

 2人は幼稚園に通うころから仲良しだった。ゆうとはいつも元気いっぱいで、大声で笑う。たっくんは、そんなゆうとが大好き。近所の公園で雨の中、2時間ぶっ続けで泥団子を作って投げ合ったこともある。

がんが再発

 2人が出会う前、ゆうとは2歳9カ月で小児がんを発症していた。16時間に及ぶ手術を耐え抜き、一度は完治した。

 だが、小学校に入学した年の8月、がんが再発して入院した。抗がん剤治療の影響で髪は抜け、体の免疫機能が弱ってマスクが欠かせなくなった。

 翌年3月、ゆうとは退院した。学校に戻る前、ゆうとは「体がついていけるかな」、家族は「以前とは違うゆうとの姿に、みんな、どう思うかな」と不安だった。

 教室のドアをガラガラッと開けると、「おう、ゆうと!」。たっくんのいつもと変わらない声にホッとした。

怪獣ノートに込めた思い

 「病気が悪くなっていると思…

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