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今週末の小ネタ:深呼吸で酸化ストレス改善? 低炭水化物と低脂肪のどっちが長生き? CBDは血圧を下げる? コーヒーチェリー抽出物とホスファチジルセリンで頭が良くなる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

深呼吸で体内の酸化ストレスが改善!

深呼吸をするだけでも体内の酸化ストレスが減るぞ!」メタ分析(R)が出ておりました。呼吸法のすばらしさについては、このブログでもよくかいてるとこですが、呼吸を変えるだけでも酸化ストレスが改善するってのは素晴らしい話ですね。

 

この研究は、高血圧や糖尿病の男女など合計519人のデータをメタ分析したもので、体内の酸化ストレスに対する呼吸法の効果をチェックした10件のRCTから、割と精度が高めな結論を出してくれております。いちおう調査の内訳をざっくりまとめておくと、

 

  • ここでチェックした酸化ストレスのマーカーは、マロンジアルデヒド(MDA)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオン(GSH)、一酸化窒素(NO)、ビタミンC、総抗酸化能(TAC)など。

 

  • 呼吸のトレーニングとしては、ゆっくりした深呼吸、速い深呼吸、吸気筋トレーニング、横隔膜呼吸、プラナヤマ呼吸などを採用し、それぞれの効果を確かめている。

 

  • 実験の期間は20日から3ヵ月。

 

みたいになります。そのうえで、呼吸法の効果を調べたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • ゆっくりした深呼吸は、MDAを減少させ、SODとGSHを増加させたが、NO、ビタミンC、TACには影響を与えなかった。

 

ということで、深い呼吸をくり返すことで、酸化ストレスのマーカーを減少させ、抗酸化状態のマーカーが増加するらしい。全体的な効果の量はそこそこなんですけど、呼吸をゆっくりするだけでアンチエイジングになるなら、これは普段から心がけるしかないですなぁ。

 

 

 

低炭水化物と低脂肪のどっちが長生きできる?

低炭水化物な食事と低脂肪の食事は、どっちが体にいいんだろう?」って疑問を調べたデータ(R)が、また出ておりました。

 

こちらは371,159人の男女(50~71歳)を対象にした調査で、みんなを23.5年にわたって調べ続けた前向きコホート研究になってます。その期間は、みんなの食事を定期的に調べまして、低脂肪食が多いグループと、低炭水化物食が多いグループに分類。さらに、それぞれの食事法を細かく分類して、

 

  • 健康的な低脂肪食、または低炭水化物食:植物性タンパク質、不飽和脂肪、質の高い炭水化物(果物、豆類、全粒穀物、でんぷん質のない野菜など)が多い

 

  • 不健康な低脂肪食、または低炭水化物食:動物性タンパク質、飽和脂肪、質の低い炭水化物(精製穀物、加糖、フルーツジュース、でんぷん質のある野菜など)が多い

 

って感じで、みんなが普段からどんな食事をしているのかをチェックし、それぞれの死亡リスクがどうなったかを追跡したらしい。

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 不健康な低炭水化物食は、全死因による死亡(+17%)、がん死亡(+17%)、CVD死亡(+15%)といった死亡リスクの上昇と相関していた。

 

  • ただし、健康的な低炭水化物食は、全死因死亡率(-5%)とCVD死亡率(-5%)といった死亡リスクの低下と相関していた。しかし、癌死亡率は相関していなかった。

 

  • 健康的な低脂肪食は、全死因による死亡(-18%)、がん死亡(-18%)、CVD死亡率(-16%)のリスクの減少と相関していた。

 

  • 不健康な低脂肪食でも、全死因死亡リスク(-2%)と癌死亡リスク(-5%)の低下と相関していた。

 

  • 飽和脂肪から摂取するカロリーの3%を、他の多量栄養素に置き換えても健康レベルが改善した。特に、飽和脂肪を植物性タンパク質に置き換えると、全死因(-10%)、がん(-5%)、CVD(-11%)による死亡リスクが低下した。

 

  • 同様に、低質炭水化物を植物性タンパク質に置き換えると、全死因(-10%)、癌(-4%)、CVD(-11%)による死亡リスクが低下した。

 

ということで、全体的に見ると低炭水化物食に不利な結論が出てる感じですが、ここで研究チームは、どちらかというと「飽和脂肪(を多く含むタイプの食事)って良くないよねー」って視点のほうを強調しておりました。

 

低質炭水化物を高質炭水化物に等カロリーで置き換えることは、死亡リスクの比較的小さな改善にしか関係しなかった。それにもかかわらず、飽和脂肪から3%のエネルギーを他の多量栄養素に等カロリー置換することは、一貫して死亡率の低下と関連していた。

 

ということで、おそらく「脂肪が悪い!いや、糖質が悪い!」って話ではなく、飽和脂肪をたくさん食べちゃうような西洋スタイルの食事が良くないよねーってとこのほうが大事なんでしょうな。

 

 

 

 

CBDは血圧を下げるのか?

CBDのメリットを示すデータ(R)が出てましたんで、いまCBDを使用中の方は参考になさってくださいませ。また、現時点でのCBDの効能については、「CBDが不安とストレスに効く!はどこまで本当なのか?のメタ分析」をチェックしてみるとよろしいかと思います。

 

これはCBDが血管の健康にどんな影響を与えるかを調べたテストで、高血圧に悩む男女16名(平均53歳)を対象にしたもの。参加者のうち6人が血圧高値(収縮期/拡張期で120-129/<80mmHg)、6人がステージ1の高血圧(130-139/80-89mmHg)、4人がステージ2の高血圧(≧140/≧90mmHg)だったそうで、なかなか状態がよろしくない人を集めたみたいですね。


で、こいつは24時間のランダム化対照クロスオーバー試験で、みんなに経口CBD(150ミリグラム)またはプラセボを8時間ごとに服用してもらい、日中は30分ごとに、夜間(午後10時から午前7時まで)は60分ごとに血圧を測定したんだそうな。

 

すると、CBDには割と良い結果が見られまして、

 

  • 全体として、24時間の平均最高血圧(133mmHg対138mmHg)と平均動脈圧(103mmHg対106mmHg)は、プラセボよりCBDの方が低かった。

 

  • さらに、24時間の平均動脈硬化度はプラセボよりCBDの方が低かった。

 

ということで、この結果を見る限りは、CBDはかなり血管の健康に良さそうな感じがしてくるわけです。CBDのリラックス効果が、血管に良い影響をもたらしているのかもですなぁ。

 

もっとも、この研究は、CBD製品を製造しているレクサリア・バイオサイエンス社から資金提供を受けているし、多数の転帰が含まれているにもかかわらず多重比較の調整が行われていないんで、データの質はかなり低いものとお考えください。とりあえず、ちょっとCBDには可能性があるかもなーってことで。

 

 

 

 

コーヒーチェリー抽出物とホスファチジルセリンで頭が良くなる

最後にもうひとつ、「コーヒーチェリー抽出物+ホスファチジルセリンのサプリメントで脳の働きが上がる!」ってデータ(R)も紹介しときましょう。コーヒーの実やホスファチジルセリンは、どちらとも昔から脳に良いのではないかと言われてきたんですが、この両者を組み合わせることで、記憶力や集中力が上がるんじゃないかって話ですね。

 

こちらは138人の成人(40~65歳)を対象にした試験で、自己申告で「記憶力に問題があって……」と考えている人だけを選んだとのこと。実験は42日間で、参加者たちに、コーヒーチェリー抽出物(100mg)とホスファチジルセリン(100mg)を組み合わせたサプリメントまたはプラセボを毎日摂取してもらい、みんなの記憶力、集中力、学習力、注意力などをチェックしたらしい。

 

で、結果は以下のようになりまーす。

 

  • サプリメントを飲んだグループは、プラセボグループと比較して、記憶に関する課題21項目中5項目、集中力に関する課題13項目中4項目、学習に関する課題14項目中1項目で大きな改善がみられた。

 

  • 注意力、日常記憶、BDNFレベルには、みんなに目立った差はなかった。

 

そんなわけで、この調査を見ると、「んー、これはわるくないかもしれん……」って気になりますね。まぁ、この研究については、サプリを開発している会社から資金提供があるし、この研究の著者の何人かは同社の社員なので、「よし!コーヒーチェリー抽出物+ホスファチジルセリンを飲むぞ!」とは思いませんが、ホスファチジルセリンは今後もチェックしていこうかと。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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