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日本人が長生きするには高タンパク?それとも低タンパク?どっちがいいの問題


  

高タンパク食で長生きできるのか?」って話は研究テーマは昔からあって、大方のデータは「タンパク質をよく食べる人ほど早死にのリスクが下がりそうな気がする」って結論を出しているわけです。

 

ただ、これはよくわからんところもあって、

 

  • 動物性タンパク質の摂取量と死亡リスクには関係なし!って報告も割とある。
  • 沖縄の長寿村を調べると、食事の大半が炭水化物であるにも関わらず、100歳を超えている人たちが多い。

 

みたいな報告もよくあるからです。特に、いわゆるブルーゾーンと呼ばれる長寿エリアを調べると、たいていは高炭水化物食で暮らしているケースがほとんどなので、果たして高タンパクどうなの?って気もするわけです。謎ですなぁ。

 

ということで、今回は、慶応大学などの先生方が、日本人を対象に「高タンパク質は長生きに良いのか悪いのか?」ってテーマを研究(R)してくれていて、まことにありがたいことでありました。

 

調査に参加したのは川崎市に住む高齢者833人で、病気になってたり、日常生活に問題がある人はふくまれていなかったとのこと(年齢85~89歳、平均BMI23、女性51%、男性49%)。また、認知機能に障害のある参加者も除外したそうな。85歳以上の高齢者の方々を850人調べたってのは、このタイプの研究では珍しくて、レア感があっていいですねー。

 

で、これは前向きコホート研究ってやつで、参加者を追跡した期間は44ヵ月。みんなの食事をアンケートでチェックした上で、日ごろのタンパク質の摂取レベル(総エネルギー摂取量に占める割合)にもとづいて、4つのグループに分類しております。

 

  • タンパク質の量が少ない人(14.7%未満)

  • タンパク質の量がやや少なめの人(14.7%~16.7%)

  • タンパク質の量がまぁまぁの人(16.7%~19.1%)

  • タンパク質の量が多い人(19.1%以上)

 

でもって、これらのデータを全死因死亡率と比べたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 全体として、タンパク質をよく食べる人ほど全死亡リスクが低かった

 

  • タンパク質の摂取量が少ない参加者と比べて、摂取量が多い参加者は、全死亡リスクが56%低かった。

 

  • タンパク質摂取量が中等度以下と中等度以上の参加者には、有意な違いはみられなかった。

 

  • タンパク質をよく食べる参加者は、動物性タンパク質(主に魚、卵、乳製品、肉類)と、オメガ3脂肪酸を含む脂肪の摂取量が多かった。

 

  • タンパク源の違いについても分析したところ、魚の摂取量が多い参加者は、少ない参加者に比べて全死亡リスクが52%低かった。

 

  • ただし、他のタンパク源(卵、乳製品など)、タンパク質の種類(動物性か植物性か)、オメガ3脂肪酸の摂取量などについては、有意な違いは認められなかった。

 

ということで、ざっくりまとめると「やっぱりタンパク質を摂ろう!特に魚をね!」って感じですかねー。牛や豚より魚が良いってのは、よく言われてきたことなので、「やっぱそうなんだなー」という印象であります。

 

ちなみに、ここでの注意点としては、

 

  • 健康でよく体を動かすような人は、不健康で運動不足の人よりもタンパク質をたくさん摂取していることが多いので、この研究の結果は、逆の因果関係によっても説明できる可能性もある。

    また、魚をよく食べる人も、一般的に健康的なライフスタイルを送っていることが多いんで、そこらへんも結果に影響していそうな気がする。

 

  • この研究では、様々な癌や心血管疾患による死亡を含む特定の死因を分析していないので、タンパク質の功罪はよく分からない。タンパク質をいっぱい食べると、特定の病気による死亡リスクは減少するものの、他の疾患による死亡リスクは増加する可能性もあるんで、こういた細かいポイントは、今後もうちょい深掘りしないといけないんだろうなぁ……。

 

  • この研究は、追跡期間がわりと短めなので、そのあいだに亡くなった方の総数も少なめ。ここらへんの限界が、オメガ3脂肪酸の効果が認められなかったり、タンパク質の種類や供給源の違いで目立った違いが得られなかった原因になっているのかもしれない。

 

ってあたりは結果の解釈を難しくしてますんで、そこらへんは頭に入れつつタンパク質を増やしていただければと。

 

個人的な雑感としましては、

 

 

 

  • タンパク源については、おそらく「魚がベスト!」というよりは、タンパク源の品質のほうが問題だろうと思うので、いままでどおり良いプロテインと、良い魚&肉を組みあわせて行きたい。

 

  • 摂取量については、「体重1kgあたり1.6g」のラインを守るのが良さそうなんで、今後もこれを維持。百寿者の方々がタンパク質を意外と食べていない問題は残るが、そこらへんは今後の課題として考える。

 

ってとこですかね。従来の結論とそんな変わらないですけど、「やっぱ日本人も普通に高タンパクの方が良さそうだよなー」ってのをあらためて教えてくれたんで、今回のデータはありがたいことでした。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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