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「芸術は人生を変えるメリットだらけだ!」って本を読んだ話#2「長生き、脳の健康、身体の痛み、ADHD改善」

 


芸術は人生の改善にメリットしかない!」の続きでーす。このシリーズでは、「芸術をめぐる脳」という「アートは良いことだらけだ!」ってのをデータで示した本から、個人的に気になったところをピックアップしております。では、続きをどうぞ。

 

 

 

アートは長生きにも役立つ

  • 疫学者デイジー・ファンクール博士による研究では、アートが病気の予防や健康増進に役立つ可能性が示されている。博士が行った、2015年の調査では、産後うつを経験した女性を調べたところ、子供をあやすためによく歌を歌う母親は子供との絆が強く、産後うつからの回復もスピードが速い傾向があった。

 

  • また別のランダム化比較試験では、子供によく歌を歌うグループは、あまり歌を歌わないグループよりも平均して1ヶ月早く産後うつから回復することがわかった。母親たちは、歌を歌うことで気持ちが落ち着くだけでなく、赤ちゃんを効率よく眠らたり泣き止ませたりできていたと報告している。

 

  • また、定期的にアート活動に参加している子どもは、10代で社会的な問題を起こす可能性が低いというデータもある。具体的な例を挙げると、毎日小説を読んでいる子どもは、健康につながる行動の量が多く、実際に健康状態も良好だった。それと同時に、薬物や喫煙に手を出す可能性が低く、思春期を通じて果物や野菜をよく食べる傾向があった。ちなみに、このような結果は、小説だけでなくマンガを読む子どもにも確認されており、おそらく単に「なにかを読む」という行為そのものが、良い影響を与えているのかもしれない。

 

  • さらに、ファンクール博士によるコホート研究では、アートが長寿をもたらす可能性も示されている。 演劇や美術館に行ったりと、数カ月に一度ぐらいのペースでアートに触れる人は、そうでない人に比べて早死にするリスクが31%も低い。また、年に1、2回ぐらいのアート鑑賞でも、死亡リスクは14%低下する。

 

  • アートがこれほど効果的な理由は、アートが認知を刺激する活動を提供し、社会的なサポートを提供し、斬新な経験を提供し、感情表現の機会を与える手助けをしてくれるからだと考えられる。これらの要素は、すべて私たちの脳の回復力を高めてくれる重要な要素だからである。

 

 

 

アートは脳の健康も改善する

  • アートは私たちのメンタルを改善するだけでなく、脳の健康も改善する。MITの神経科学者リ・ヒューイ・ツァイ博士は、光と音を使って脳の神経パターンを変え、アルツハイマーの病態を消し去り、認知力を向上させる可能性を示した。これはまだ動物実験の段階なので注意が必要だが、特定の光と音を使うだけで良いので、非常に手軽な改善方法として期待できる。

 

 

  • 研究チームは、特定の光と音のパターンが脳のガンマ振動を増加させ、脳の老廃物を除去するメカニズムを刺激すると考えている。脳脊髄液(CSF)と呼ばれる液体が脳組織に入り、これが脳の何らかの老廃物を洗い流し、リンパ系を通して排出する可能性がある。

 

 

 

アートは身体の痛みをやわらげるのに役立つ

  • 年を取って慢性的な痛みに悩まされる人は多く、この問題を解決するには、薬を飲んでじっとしていなければならないという考えがいまも根強い。しかし、近年の研究は、「頭痛や腰痛がした時ほど立ち上がって踊るべきだ!」という主張がメインストリームになりつつある。

    たとえば、2021年に発表された研究によると、マインドフルにもとづいたダンスセラピー(MBDMT)が、体の痛みをやわらげる効果的な治療になりうるという証拠が増えつつある。まだパイロット研究の段階だが、慢性的な頭痛に悩む患者がMBDMTを受けたところ、痛みの強さと抑うつが統計的に有意に減少した。

 

 

  • また、近年では、最も耐え難い痛みのひとつと言われる「重度の火傷の治療」についてもアートの効能が注目されている。

    具体的には、ある研究チームが、「スノーワールド」と呼ばれる、痛みの管理に特化した没入型VRプログラムを作った。これは、火傷の治療の際に患者にヘッドセットを装着し、アニメーションアートを見たり、リラックスできる音楽を聞くというもの。

    火傷の患者は、3DCGで生成された白と青を基調とする冷たくて心地よい冬の世界に放り込まれ、雪だるま、氷の湖、氷河、ペンギンなどと遊ぶことが出来る。患者たちは、このVRを使用している間、通常の治療と比較して35~50%痛みを感じなかったと報告した。

 

 

 

アートはADHDの緩和にも役立つ

  • カリフォルニア大学の神経科学者アダム・ガザリー博士は、数十年にわたって脳の注意力を研究してきた知見を使い、ADHDに対処するための没入型ビデオゲームを考え出した。このゲームは『ニューロレーサー』と呼ばれ、認知制御と注意能力の基礎となる神経ネットワーク(干渉解決、注意散漫耐性、タスク切り替え)を刺激する挑戦するようにデザインされている。

 

 

  • このゲームでは、ゴールを達成するためにがんばると同時に、自分の注意を逸らすような障害を無視しなければならない。そのため、ゲームのクリアまでひたすら高度な認知コントロールが要求され、最終的には現実の世界でもプレーヤーの注意力を向上させるのに役立つ。実際のRCTでも、このゲームにより、プレイヤーの神経メカニズムに持続的な効果があったことが示されている。

 

 

  • ガザリー博士は、その後アキリという会社を立ち上げ、より洗練されたアート、音楽、ストーリー、プレイヤーへの報酬サイクルの改善を実施。「EndeavorRx」と呼ばれる新たなゲームを作り出し、これはADHDの子どもを治療する医療機器としてFDAに承認された。これは、ADHDの改善における最初の非薬物治療法であり、現在は医師によって処方されている。

 

 

ってことで、いろいろ書いてたら長くなったので、残りの項目はさらに次回に続きます。ではまたー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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