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「他人の時間を生きている」状態を抜けだして真の目標を探すための「空の椅子テクニック」

 


 ゲシュタルト・セラピーの本(R)を読んでたら、「空の椅子テクニック」を「自分の本当の目標を探るために使ってみようぜ!」って話が出てておもしろかったのでメモ。

 

ゲシュタルト・セラピーってのは、「意識に上らない自分の一部」に意識を向ける心理療法で、それによって自分を改善していこうぜ!って考え方をする心理療法のひとつ。わりと歴史が長い手法で、ゲシュタルト療法を12回受けた女性は、対照群よりも自己効力感が高まったよーってデータ(R)があったり、うつ病の女性にゲシュタルト療法を9セッションやったらうつ病が大きく改善したよーみたいな研究(R)があったりします。

 

まぁ、ゲシュタルト療法を支持する証拠の大部分は個人のエピソードがベースなんで、もっと細かい検証が必要だとは思いますが、それなりに受け入れられている手法じゃないかと。個人的には、ゲシュタルト・セラピーよりは認知行動療法(CBT)を推奨したいですけど、ここで使われるテクニックの数々には、見るべきものがあるだろうと思うわけです。

 

でもって、この「空の椅子テクニック」ってのは、ゲシュタルト・セラピーで最もよく使われる手法で、どんな感じかをざっくり申し上げますと、

 

  • 別の人間になりきって、その人の視点から考えてみよう!

 

みたいになります。あらかじめ空の椅子を用意しておき、そこに座ったときだけは、まったく別の人間になりきってものごとを考えてみるわけです。これによって自己分析が進み、メンタルの問題を解決しやすくなると言うんですな。

 

で、ここでは「空の椅子」を使って、「自分の本当の目標ってなんだろう?」って疑問を掘り下げる方法を見てみます。本当の目標なんて分かってるよ!と思う方もいるかもですが、実際には、それは「親が期待する目標が、気づかぬうちに無意識にすり込まれた」ものでしかなかったり、「友人や会社の期待に応えるうちに、他人の目標が内面化された」ものだったりするんですよ。

 

当然、これらの目標は、自分が心から抱いている真のゴールってわけじゃないので、無闇に追いかけたところで「アレ?なんか違うな……」みたいな結果になりがちなんですよ。ジョブズさんが言うところの「他人の時間を生きている」状態になっちゃうんで、それは当然のことでしょう。

 

ってことで、この問題を乗り越えるために、ゲシュタルト・セラピーでは以下のようなステップを踏みます。

 

  1. 椅子を2つ用意して並べる。


  2. 片方の椅子に座り、まずは「自分の人生の夢は何だろう?」と考えて、誰かに説明しているかのように声に出して話してみる。


  3. 人生の夢を語りつつ、自分の身体にどんな「身体感覚」が湧き上がってくるかを意識しつつ、その感覚を声に出して表現してください。「心臓のあたりがゾワゾワしていて、これは興奮を表しているなー」とか「のどが締め付けられるような感じがして、これは恐怖を感じているのかなー」みたいな感じ。人生の夢を考えたときに、自分の身体がどんな変化を起こすかをチェックしてみるわけです。


  4. その身体感覚が、心地よいものですか、それとも心地よくないものかを判断。もし、ここで自分のなかに心地よい身体感覚があれば、それはあなた自身が抱く本当の夢である可能性が高いと判断できる。逆に不快な身体感覚がある場合は、両親や会社など、他の誰かが抱いた目標が描写している可能性があります。


  5. もし不快な身体感覚があるなら、再び自分の中をチェックして、「これって自分以外の誰の目標や夢じゃないか?」と考えてみる。もし、自分の目標だと思ったものが、両親や他の誰かのものじゃないかと思った場合は、別の椅子に移動する。

     

  6. 別の椅子に座りつつ、他人の視点になったところを想像し、その人物が持っている夢や目標の内容を声に出して語ってみる。たとえば、「自分の目標って父親の目標じゃないの?」と思ったなら、椅子に座って自分が父親になったところを想像し、父親が抱いていたであろう夢や目標語る。

  7. それが終わったら、再びもとにもどり、自分にとっての夢や目標を探す。身体感覚に注意しつつ、ポジティブな反応が起きるものはないかに気を配る。とりあえず真の目標が見つからなくても良いので、身体感覚に注意しながらいろいろ探してみるのが大事。

     

  8. 最後に、立ち上がって2つの椅子を見つつ、それぞれの椅子で話したことから、何か新しい発見が得られないかを考えてみる。

     

というわけで、「空の椅子」の手順は以上です。確かに、これをやると自分の人生を客観的に見つめやすくなるんで、 両親が自分の人生へおよぼす影響、友人知人が自分の人生へおよぼす影響、自分自身の人生などを理解しやすくなりそうっすね。

 

私見では、ここで最も大事なのは自分の身体感覚に注目するとこで、身体に出てくる快不快を基準にしてみるっては、表面に出てきた感情をとっかかりにするよりわかりやすいような気はしました。というのも、最近の研究だと、私たちが決断を下す際には、無意識のうちに身体感覚を頼りにしていることが明らかになってるもんで(いわゆる「身体化された認知」)。

 

また、この方法では椅子を使ってますけど、「他人になったつもりで夢や目標を書き出してみる」って方法でも効果はありそうな印象ですね。要はイメージワークの一種なので、他人になりきるためのトリガーが用意できれば、なんでもいいんじゃないかなぁ……と(あくまで推測ですけど)。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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