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ハーバードの先生が「ぼんやりしながら成功する方法」を3つにまとめてくれてます

 


ハーバード大学のスリニ・ピレイ先生が、「脳をうまく使いこなす方法」をまとめた総説(R)を出していて、これがためになったのでメモ。ピレイ先生は「ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法 」の作者で、公衆衛生とリーダーシップ開発の分野で有名な先生ですね。ちなみに、この本は、「ぼんやりしている時の脳も良い働きをしてるんだよー」って話をまとめた良い本なんですが、「究極の思考法」っていう邦題で損をしている気がしております。

 

で、本稿も、「ぼんやりしている時の脳」を上手く使う方法を教えてくれてまして、まずは大まかなポイントをざっくりまとめておくと、

 

  • 最近の研究によると、人間のパフォーマンスが最も高まるのは、「集中状態」と「ぼんやり状態」を交互に行う時である。このくり返しによって脳が回復し、創造性が高まり、決断力も上がる。

 

  • ぼんやり状態の脳は、ただ何もしていないわけではなく、いろんな記憶を検索しまくり、複数のアイデアを結びつけ、これが意思を決定する能力を高めてくれる。

 

みたいになります。ぼんやりしている時の脳ってのは、実は総エネルギー量の20%を使っており、私たちのパフォーマンス改善に重要な働きをしているわけですね。

 

でもって、このような「ぼんやり脳」のパワーを使いこなすには、具体的に以下のような方法が考えられます。

 

  • PCDを使う

    PCDは「ポジティブで建設的な空想(positive constructive daydreaming)」の略で、意識して楽しい空想にふけることを意味する。過去のデータでは、受動的に浮かんでくる空想に身をまかす人ほど幸福度が下がってしまうとの報告が出ているが、意図的に「ぼんやり脳を働かせるのだ!」と考えて行えば、メリットを得ることができる。


    PCDを実践するには、頭を使わない気楽な読書、手だけを動かせばすむガーデニングのように、集中力の負荷が低い作業を行い、その際中は、できるだけ良い空想を浮かべる。どのような空想をするかは個人の趣味なので、リゾート地で遊んでいるところでも良いし、大きな仕事を達成したところでも良いし、昔に起きた楽しかった体験でも良いし、自分が心から楽しめるものならなんでもOK。

    心理学者ジェローム・シンガーの研究によれば、この作業によって「ぼんやり脳」が働きだし、記憶の倉庫からいろんな情報を引き出そうと頑張り始める。そのおかげで、自分でも完全に忘れていたような記憶が呼び起こされ、これが斬新なアイデアを生んだり、自分への理解を深める方向に働いてくれる。

    ピレイ先生は、これを「心理の重心」と呼び、PCDを普段の習慣として意識的に取り入れることで、脳の働きがアップする考えている。

 

 

  • 昼寝はやっぱすごい

    人間は、脳が集中モードに入りすぎると、どんどん視野が狭まっていき、その結果として思考のクリアさやクリエイティビティが低下していく。しかし、ここで10分間の昼寝をすると、脳がかなりクリアになり、注意力も上がるというデータが存在している。

    ただし、10分の昼寝で機能が上がるのは注意力であり、クリエイティブの能力を高めるほどの力はないと考えられるので注意。もしクリエイティビティを復旧させたいときは、90分は寝て脳を完全にリフレッシュさせる必要があるかもしれないと、ピレイ先生は主張している。

    といっても、個人的には、昼寝に90分も使ってしまうと、夜の睡眠に悪影響が出てくる可能性もあるので判断が難しいところ。とりあえず、「良いアイデアが何も出ない〜」って時は、30分ぐらいの昼寝からはじめて様子を見てみるのが良いような気がする。

 

 

  • 違う人のふりをしてみる

    まったく別のキャラクターになりきってみるのも、凝り固まった集中脳を解きほぐす働きがある。教育心理学者のデニス・デュマスらの実験では、「自分のことをヘンな振る舞いをするアーティストだったら?と考えて行動してみてくださいねー」と被験者に指示したところ、「自分がルールを厳格に守る公務員だったら?」と想像してもらったグループよりも、クリエイティビティが必要な問題を解決する能力がアップすることが分かった。

    また、同じような効果は、たんに「別の人間だったらどう行動する?」と考えるように指示された人たちでも確認されたため、たんに自分と違う人をイメージするだけでも良いのかもしれない。なので、「なにも良いアイデアが出てこない!」って状態におちいったときには、「自分が誰か別の人間だったら?」と考えてみるとよさげ。これだけでも凝り固まった思考から解き放たれ、別の視点からものを考えられるようになる。

 

 

ってことで、ピレイ先生が考える「ぼんやり脳」のうまい使い方は以上です。PCD、昼寝、別人のふりなどを習慣にしてみると、いざというときに必要な集中力パワーを温存できるし、それによってクリエイティビティも発揮できるようになりますんで。どうぞお試しをー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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