2023.11.28 | コラム

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行で気をつけたいこと

感染症内科医Dr.伊東が解説! この冬知っておいてほしいこと

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行で気をつけたいことの写真

2023年秋冬のインフルエンザは、昨年からの流行が収まらないままに患者数が増加するという、今までに例を見ない状況となっています。新型コロナウイルス感染症については10月以降新規患者の報告数が減少しておりますが(2023年11月28日時点)、今後再度の流行が懸念されます。このコラムでは、感染症内科医として皆さんに知っておいて欲しいコロナ&インフルの同時流行で気をつけたいことを説明します。

今シーズンのインフルエンザの流行の特徴は?

日本国内では2020年以降に2シーズンに渡りインフルエンザの流行がなく、2022-2023年のシーズンにも大規模流行がありませんでした。しかし、2023年は小規模ながら、春・夏にもだらだらとインフルエンザの発生が持続し、現在の流行に至っています。これは、過去2シーズン期間にインフルエンザウイルスに対する抗体価が低下し、子どもや高齢者を中心に感染しやすい人が増加していることが原因の一つとして考えられます。特に学校で共同生活を送る子どもでは感染が広まりやすく、実際に、11月28日時点まででインフルエンザ患者全体の約半数が15歳未満の子どもであり、各地で学級閉鎖が数多く報告されています。

 

ワクチン接種でインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に備えよう

インフルエンザはすでに流行期に入っておりますが、今後新型コロナウイルス感染症の再流行によって同時流行がこれまで以上に懸念されます。

新型コロナウイルスに対する以下の基本的な感染対策(飛沫感染対策、エアロゾル感染対策、接触感染対策)は、インフルエンザ対策(飛沫感染対策、接触感染対策)としても有効です。

 

【基本的な感染対策】

  • マスクの着用

    • 混雑したバスや電車に乗る場合
    • 医療機関や高齢者施設に入る場合 など
  • 手洗い
    • 石鹸と流水でこまめに手を洗う
  • 換気
    • 換気扇を常時運転する
    • 窓を開ける(2か所開けると効果的)  など

 

そのため、特に流行期においては今まで行ってきたこれらの感染対策をできる範囲で継続する必要があります。

 

また、基本的感染対策の実施に加えて、インフルエンザワクチンの接種が推奨されます。米国でのインフルエンザのワクチンの実社会における効果は、2021-2022年のシーズンでは36%、2022-2023年のシーズンでは54%と報告されており、例年同様の一定の効果が確認されています。加えて、重症化リスクや入院リスク、死亡リスクを減らす効果もあります(詳しくは「感染症内科医が伝えたいインフルエンザワクチンのメリット」を参照)。

また、新型コロナウイルス感染症の予防接種も、オミクロン株XBB.1.5に対応した1価ワクチンの接種がすでに始まっていますので、対象者(*)は接種を行うことが推奨されます。なお、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同時に接種することが可能で、別々に接種する場合にも間隔を空ける必要はありません。

*対象者:生後6か月以上の全ての人が対象。初回接種を受けた人は最後の新型コロナワクチン接種から3か月以上空けて受けることができます。新型コロナワクチンを打ったことのない人も受けることができます。詳しくは厚生労働省「オミクロン株対応1価ワクチンの接種は、どのような人が対象になりますか。」をご確認ください。

 

発熱時の受診の目安

症状が比較的軽く、自宅にある常備薬などで療養できる人は、診療所や病院に行かないで自己対応しても問題はありません。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザを疑う症状があり、「医療機関を受診しようかな」と思った際には、まず国が承認したキットを用いてチェックするとスムーズです。発熱などの体調不良時に備えて、普段から「体外診断用医薬品」と記載のある新型コロナウイルスおよびインフルエンザの抗原検査キットと、解熱鎮痛薬を常備しておくと良いでしょう。

 

【国に承認された検査キット一覧と、入手可能な店舗リスト】

 

検査結果に関わらず、症状が軽ければ基本的には自宅で療養が可能です。その際には、周りの人に感染させないようにマスク着用や手洗いなど基本的な感染対策をお願いします。なお、重症化リスクの高い人(高齢者、持病がある人、妊婦など)や、症状が重い人は、医療機関に連絡するようにしてください。かかりつけがある人は、まずはかかりつけの医療機関に相談し、そうでない人は、ホームページや電話でクリニックに確認してから受診するようにしてください。

 

自宅療養で気をつけること

インフルエンザにしても、新型コロナウイルス感染症にしても、ウイルスを排出している間は他の人に移してしまうリスクがあるために外出を控えたほうがよいでしょう。インフルエンザについては、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」を出席停止期間としています。一方で、新型コロナウイルス感染症では、発症後5日間経過かつ症状がおさまった後24時間経過するまでは自宅療養がすすめられます。

また、発症後10日目までは手洗いの徹底やマスクの着用が望ましいでしょう。新型コロナウイルス感染症の5類化以降は、新型コロナウイルス感染症に罹ってしまったとしても、法律に基づく外出自粛は求められなくなっているものの、周囲への配慮は必要かと思います。

 

さいごに

新型コロナウイルスやインフルエンザの流行は今後も続くことが予想されるため、感染対策やワクチンは引き続き重要です。新型コロナウイルス感染症が5類になったことで、これまで以上に個人レベルの感染対策が重要になってくるかと思います。

 

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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