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今週末の小ネタ:クレアチンのサプリで頭が良くなる?ダンスでメンタルヘルスと認知機能を改善できるか?シンバイオティクスでアレルギー性鼻炎は改善する?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

クレアチンのサプリで頭が良くなるかどうかは年齢による?

毎度おなじみの筋トレサプリであるクレアチンは、昔から「頭が良くなるのでは?」と言われてきたわけです。 クレアチンってのは、体の主要なエネルギー源を補充してくれるので、そのおかげで脳機能も高まる可能性があるんですよね。クレアチンの大部分(約95%)は筋肉内に貯蔵されるものの、脳内にも少量が存在しており、エネルギーを必要とする認知タスクの燃料に使用われるんですよ。

 

ただし、最近になって出たデータ(R)では、クレアチンで頭が良くなるかどうかは、年齢によるところが大きいのではないかと言う結論になっておりました。 この研究は、健康に問題がない成人30名(19~33歳)を 対象にしたもので、6週間のランダム化比較試験 を行っています。具体的には、参加者を「毎日10gのクレアチンを飲む」「20gのクレアチンを飲む」「プラセボを飲む」 と言う3つのグループに割り振ったんだそうな。

 

その上で、 研究の前後に認知テストを 行ったところ、 結果はこんな感じになりました。

 

  • 認知パフォーマンスや前頭前野の酸素量について、グループ間に差はなかった。

 

てことで、クレアチンを飲もう飲むまいが、脳機能に明確な差はなかったらしい。 これは、以前のメタ分析とは異なる結果でして、ちょっと不思議なんですよね。

 

このような食い違いが起きた理由について、研究チームは、以下のように推測しておられます。

 

  • 過去の研究を見てみると、健康的な若い参加者(10~12歳)を対象 にした場合は、クレアチンを7日間飲み続けても認知機能や脳内クレアチン含有量に影響を及ぼさなかった。したがって、クレアチンのサプリメントで認知機能を高めるためには、脳内クレアチン含有量を有意に増加させる必要もあるということかもしれない。

 

  • 実際、ベジタリアンやビーガン(肉や魚がクレアチンの主な食事源であるため脳のクレアチンレベルが低い) を対象にした試験では、1日5gのクレアチンを6週間 飲み続けたところ認知機能が改善したそうな。

 

  • いくつかのメタ分析によると、クレアチンのサプリメントは高齢者(66~76歳)の記憶力を向上させるが、若年者(11~31歳)の記憶力は向上させなかったとも 報告されている。 そのため、脳内のクレアチン量が減りがちな高齢者ほど、クレアチンのメリットは大きいのだと考えられる。

 

と、いうことで、体内のクレアチン量が多い若者には、サプリの意味があまりないのではないか、と。

 

そう考えると、クレアチンのサプリで 頭が良くなりやすい人の条件と言うのは、

 

  • ストレスが多い人:ストレスは脳内クレアチンの減少を引き起こし、脳機能を低下させやすい。 そのため、クレアチンのサプリを 飲むことで、脳内クレアチンの予備ができ、急性のストレス要因による枯渇を防いで、通常の脳機能を維持できる可能性がある。

 

  • 高齢者の人:他の研究は、クレアチンのサプリメントが、高齢者の認知機能を高める可能性があることを示している。

 

  • ベジタリアンやヴィーガンの人:野菜だけの 食事は脳内のクレアチンを不足させる可能性があるため。

 

って感じになるでしょうね。 まぁよしんばクレアチンで頭が良くならなかったとしても、運動サプリとしての効能はほぼ確認されているので、普通に使っていけばいいと思いますが。

 

 

 

ダンスでメンタルヘルスと認知機能を改善できるか?

ダンスがメンタル良いってデータも昔からよくあったりします。 良い有酸素運動であるのはもちろん、複雑な動きを要求されるので、自然と脳トレにもなるんですよね。

 

 

で、 近ごろ新しいメタ分析(R)が行われまして、「ダンスはどこまでメンタルヘルスと認知機能を改善してくれるのか?」 と言う問題を調べてくれておりました。

 

研究の対象 になったのは、軽度認知障害のある高齢者984人(平均年齢65~81歳)で、 合計で10件のランダム化比較試験の系統的レビューとメタ分析を行ってくれています。試験が行われた国は中国がメインですが、 日本で行われたデータも含まれております。

 

データの内訳も書いておくと、

 

  • ダンスのスタイルは、社交ダンス、スクエアダンス、エアロビックダンス などさまざま。

 

  • セッションの期間は12~48週間で、週1~3回ずつ、1回30~60分のセッションが行われた。

 

  • 一方で、対照グループには、理学療法が行われるか、通常のライフスタイル を続けるように指示が出た。

 

みたいになります。その結果はどうだったかと言うと、

 

  • ダンス療法は全体的な認知機能を改善し、その効果量も大きかった。
  • 記憶、注意、言語理解において中等度の向上が観察された。
  • ダンス療法は精神的健康にも中程度の好影響を与えたが、QOL(人生の質)には影響しなかった。
  • 1回あたりのダンスの時間や、 1週間あたりのダンスの回数は、 脳機能の改善の結果には影響 がないっぽい。
  • ダンスの種類については、エアロビクスは統計的に有意な効果を示さなかったが、社交ダンスとスクエアダンスは認知機能の改善に非常に効果的だった。

 

て感じだったそうな。全体的な認知機能と メンタルヘルスについては 結果がバラバラなんだけど、記憶力、注意力、言語理解力の改善については、 どの実験でも似たような結果が出ているし、 その効果量も大きいので、かなり信頼できる結論になってるんじゃないでしょうか。

 

あくまで軽度の認知症障害がある人を対象にした試験ですけど、 普通に考えれば、若い人にも自分に脳機能改善の効果があるんじゃないかと思う次第です。

 

 

 

シンバイオティクスでアレルギー性鼻炎は改善する?

シンバイオティクスってのは、腸内細菌とそのエサを一緒にとること で、単純に腸内細菌のサプリだけを飲むよりもメリットが大きいとされています。くわしくは「腸内環境をガッツリ良くする「シンバイオティクス」のススメ」をご覧ください。

 

で、新しいデータ(R)もシンバイオティクスの話で、「アレルギー性鼻炎はシンバイオティクスで改善するか?」 と言う問題について調べてくれています。 研究に参加したのはアレルギー性鼻炎に悩む 男女30名で、ステロイド点鼻薬などが効かなかった人だけを選んだそうな。

 

実験の期間は4ヵ月で、参加者は普通の鼻炎治療も受けつつ、シンバイオティクスのサプリメントかプラセボを毎日摂取したとのこと。サプリメントには、7種類の腸内細菌を含む1x109コロニーのプロバイオティクスサプリと、フラクトオリゴ糖が含まれていたらしい。 新バイオティクスとしては、割と標準的な内容じゃないでしょうか。

 

結果をざっくりまとめると、こんな感じになります。

 

  • 実験前と比較して、IgEのレベルはどちらのグループでも変化しなかったが、アレルギー性鼻炎の症状とQOLはどちらのグループでも改善した。

 

  • アレルギー性鼻炎症状の改善レベルは、プラセボよりもシンバイオティクス グループで大きかった。

 

ということで、プラセボよりもシンバイオティクスの方が、アレルギー性鼻炎の症状は軽かったらしい。 もっとも、この研究は、予備登録 バージョンといくつかの違いがあるし、多重比較の調整も行っていないので、所見に対する信頼性が いまいち低下しているかなーといったところです。 そこはご注意あれー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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