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今週の小ネタ:牧草牛のプロテインっていいの?肌トラブルを起こしやすい化粧品の成分とは?脂肪肝にプチ断食は効くの?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

牧草牛のプロテインと普通のホエイプロテインはどっちがいいの?

プロテインのなかには、「グラスフェッド」と呼ばれるものがあるわけです。これは、自然の環境で牧草だけで飼育された牛から取った牛乳を使ったプロテインのことで、日本語で言えば「放牧牛」ですね。いっぽうで、和牛や国産牛のほとんどは穀物で育てられていて、グレインフェッドビーフ(穀物牛)などと呼ばれております。

 

一般には、穀物牛よりは放牧牛の肉のほうが身体に良いとされてまして、そう考えるとプロテインもグラスフェッドを選ぶべきなのではないかって考え方が出てくるうわけです。事実、近年はグラスフェッドのプロテインも増えてまして、「LOHAStyle(ロハスタイル)ホエイプロテイン 」「NICHIGA(ニチガ) GRASS FED WPI instant ホエイプロテイン」あたりが有名ですね。

 

で、新しいデータ(R)もグラスフェッドなプロテインの効果を調べていて、普通のプロテインと比べて「運動の回復効果が高いかどうか?」を調べてくれています。

 

参加者は健康な筋トレ好き39名(18~40歳)で、まずはみんなに1RMの60%で10回10セットのスクワットをしてもらって筋肉のダメージを誘発。その後、グラスフェッドのプロテイン、穀物プロテイン、またはプラセボを1日3回ずつ、3日間連続で摂取させたんだそうな。プロテイングループは1回25gのタンパク質と2gの炭水化物を飲み、プラセボは1回0gのタンパク質と32gの炭水化物を飲んだとのこと。

 

すると、結果はこんな感じになりました。

 

  • グラスフェッドのプロテインと穀物プロテインを飲んだ参加者の間で、運動後のダメージ回復について目立った差はなかった

 

  • というか、ダメージ回復が最も良好だったのはプラセボグループで、プラセボグループは、運動から72時間後にバーベルバースクワットのスピードが回復したのに対し、ホエイプロテイン群ではいずれもそのような改善は見られなかった。

 

ということで、グラスフェッドだろうが穀物牛だろうが、運動後の肉体回復には関係がないらしい。

 

グラスフェッドのプロテインには、ラクトフェリン、リゾチーム、β-ラクトグロブリンといった成分がふくまれていて、これらが抗酸化作用、抗炎症作用、免疫調節作用を発揮すると言われていたんで、今回の結果はちょっと意外っすね。参加者のデータを見ると、ほとんどの人がすでに高タンパク質を摂取していたみたいなんで(1日に体重1kgあたり1.6~1.8g)、そのせいでプロテインを追加しても効果が出にくかったのかもしれませんが。

 

あと、プラセボグループのほうが筋肉ダメージが回復しているいのがおもしろいですけど、これは単純プロテイングループよりも炭水化物を多めに摂取したからでしょうね。やっぱり、運動のダメージ回復には炭水化物なんでしょうなぁ。

 

まぁこの実験だけだと、「グラスフェッドのほうが長期的に筋肉がつきやすいのでは?」って疑問の答えは得られないんですが、5年前にも書いたとおり、個人的にはまだグラスフェッドを飲むだけの理由が見当たらない感じかなぁ。

 

 

 

肌トラブルを起こしやすい化粧品の成分とは?

肌荒れしやすい化粧品の成分をチェックしてみたぞ!って研究(R)が参考になったのでメモ。

 

これは44の症例報告と3つの症例シリーズのデータを調査し、「皮膚炎が起きやすい成分ってなにがあるの?」を調べた系統的レビューになってます。主にリップケア製品にふくまれる成分をチェックしていて、58人の男女を対象にしたデータをあつかってます。

 

では、結果を見てみましょうー。

 

  • アレルギー反応の原因として最も一般的な成分は、ワックス、ヒマシ油、コロフォニー(松やに)、没食子酸塩、ベンゾフェノン-3だった。

 

  • ワックスの具体的な物質としては、プロポリス(ミツバチが生産)、セレシン、カルナウバロウ、キャンデリラワックスがあった。

 

  • 問題を起こした報告が多いのは、ひまし油またはリシノール酸(合成リシノール酸を含む)などだった。

 

  • 没食子酸塩も肌トラブルの報告が多く、最も一般的なのは「没食子酸プロピル」で、没食子酸オクチルと没食子酸ドデシルが原因になることもあった。

 

  • ベンゾフェノン-3はオキシベンゾンとしても知られ、日焼け止めによく使用される紫外線吸収剤で、リップケアや化粧品の光安定剤としても使われている。日焼け止めの主なアレルゲンと言われることが多い。

 

  • その他、香料(シトラールおよびバニラ)もまた、肌トラブルの原因である可能性も大きい。

 

ってことで、これはあくまでリップケア製品だけを調べた研究ですけど、ここで名前が出た成分は、リップ以外でも気をつけておいたほうが良いでしょうね。

 

 

 

脂肪肝にプチ断食は効くの?

脂肪肝がめっちゃ怖いのは言わずもがな。肝臓に中性脂肪が蓄積された状態で、放置すると心臓病や癌につながり、死亡率が上がっちゃうんですな。痛みなどの自覚症状がないのもまた恐ろしいところです。

 

この問題をクリアするには運動がベストなんだけど、近年は「プチ断食も有効なのでは?」と言われ、研究が進んでたりします。食事をする時間を1日8〜10時間ぐらいに制限することで、脂肪肝が効率よく改善するんじゃないかと考えられてるんですな。

 

ってことで、新しいデータ(R)は、非アルコール性脂肪肝に悩む患者さん32名を集め、プチ断食の威力をチェックしてくれてました。

 

これは12週間のクロスオーバー試験で、すべての参加者に2つの食事を指導してます。

 

  • プチ断食:午後12時から午後8時まで好きに食事をとってOK。それ以外の時間はブラックコーヒー、紅茶、水のみ。

 

  • 通常ケア:オーストラリア消化器病学会のガイドラインに基づいた運動とカロリー制限のアドバイスを受ける。具体的には、低脂肪、高繊維質の食事を摂り、有酸素運動と筋トレを週5日以上行い、1週間あたり0.25〜0.50kgの体重減少を目標とする。

 

でもって、これらの食事を2週間続けたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 通常ケアと比べて、プチ断食は、肝脂肪、体重(-1.85kg)、ウエスト周囲径(-3.85cm)が減り、高比重リポ蛋白コレステロール値をわずかに増加させた。

 

ってことで、明らかにプチ断食のほうが良い結果が出てますね。ちなみに、食事摂取と身体活動のデータを見ると、参加者が摂取したカロリーと身体活動レベルは実験前から変わらなかったそうで、やっぱプチ断食は良さそうだなーって感じですね。

 

まぁこの研究については、介入の間にウォッシュアウト期間がないし、多重比較の調整を行われていないんで、偽陽性の結果が出ている可能性も高め。そこは注意していただきたいですが、脂肪肝にお悩みの方は考慮しても良いかもですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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