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【質問】結局、コラーゲン・サプリメントを飲むのはアリですか?

 


 こんなご質問をいただきました。

 

コラーゲンのサプリについてどうお考えでしょうか?鈴木さんのブログを読んでいると、コラーゲンは体内でアミノ酸に分解されるから意味がないという意見と、実は意外とお肌を改善するメリットがあるという意見があって、どちらにも説得力を感じて困ってしまいます。

 

ってことで、結局のところ、コラーゲンのサプリには意味があるのか? もし意味あるとすればサプリを飲み続けるべきなのか?といったお尋ねです。

 

確かに、このブログでは、コラーゲンについてあいまいなスタンスを取ってまして、

 

  • コラーゲンは体内でアミノ酸に分解され、それが肌や腱などの修復に使われるかはわからない。→ だからコラーゲンは意味がないかも?

 

  • 実際に近年のコラーゲン研究を見てみると「肌が改善したぜー!」みたいな報告も少なくない。→ なので、実はコラーゲンサプリは飲んだほうがいいのかも?

 

って2つの考え方をどちらも紹介してたりします。これは、どう考えるべきか迷っちゃいますよね。

 

それでは、この問題を考えるにあたり、まずはコラーゲンに関する最近の知見などをチェックしてみましょう。

 

  • 1721人を対象にした26の試験でメタ分析を行ったところ、加水分解コラーゲン(HC)のサプリを飲んだグループは、プラセボ群と比較して、皮膚の水分補給と弾力性が有意に改善した(R)。

 

  • コラーゲンを摂取した被験者を調べた試験では、血中のグリシン、プロリン、リジンの濃度が上昇したことにより、肉体の組織におけるコラーゲン合成が増加していた(R)。

 

  • 12週間の筋トレをこなした女性に、1日15gのコラーゲンを飲んでもらったところ、除脂肪体重が増加し、体脂肪が減少し、筋力が向上した(R)。この研究だと、コラーゲンを飲んだグループは、対照グループよりも筋肉の量が改善した(+1.8±1.6% vs +0.9±1.6%、d=0.55、p<0 .05="" li="">

 

  • スクワットを行う健康な中年男性を対象にした研究(R)では、33日間にわたってコラーゲンかプラセボのいずれかを摂取してもらったところ、運動直後の筋肉痛と疲労は、コラーゲンを飲んだグループよりも低かった。

 

  • 関節炎に関するメタ分析(R)によれば、コラーゲンのサプリで全体的な痛みと障害を有意に減少させると結論づけている(痛みの評価にいくつかの矛盾があるのが難点ですが)。しかし、対象となった研究はわずかであり、それぞれの研究で異なる製剤のコラーゲンが使用されたため、どのコラーゲンが最も効果的なのかについてはよくわかっていない。

 

 

若い健康な成人を対象とした研究に目を移すと、関節の健康にやや有望な結果を示す2つの研究がある。24週間の無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、活動に関連した関節痛を持つアスリートに対するコラーゲン加水分解物補給の効果が検討された。この研究では、147人の大学チームまたはクラブスポーツのアスリートを募集し、97人が研究を完了した。被験者には、毎日10グラムのコラーゲンまたはプラセボが投与された。主要アウトカムは、痛み、可動性、炎症の変化であった(R)。

 

 

というわけで、これらの新しい知見を総合すると、コラーゲンのサプリを飲むことで、筋肉や肌のコラーゲン量が増えて、メリットを得られそうな気がしてくるわけです。これはちょっと飲みたくなりますね。

 

こうなると、誰でも気になるのが「ホエイプロテインを飲めばいいのでは?」って問題です。コラーゲンってのは、要するにアミノ酸の集まりなんだから、すべてのアミノ酸がふくまれる普通のホエイプロテインパウダーを飲めば事足りるんじゃないの?と考えるのは当然でありましょう。

 

この疑問については、まだ明確な答えがあるわけじゃないんですが、あえてコラーゲンのサプリを飲む理由を考えてみるなら、以下のようになります。

 

 

  • コラーゲンが体に良い(可能性がある)理由1:ホエイプロテインよりもグリシンの量が多い

    コラーゲンには、主要アミノ酸であるプロリン、ヒドロキシプロリン、グリシンの量はホエイプロテインよりも多い。特にヒドロキシプロリンとグリシンの量はコラーゲンの方が多く、プロリンの量はホエイに近い。一方で、コラーゲンには、ロイシンとイソロイシンがほぼ存在しない。

    そのため、一部の研究者は、「グリシンがコラーゲンのメリットを引き出しているのでは?」と考えている。グリシンはプリン、ポルフィリン、クレアチン、グルタチオンといったナイスな成分の材料になるし、コラーゲンの合成にも関わっている。

    グリシンは、これらの化合物にいったん取り込まれると再利用できないので、極度のストレスに悩まされている人や、食事から摂取するタンパク質が不十分な人は、グリシンが足りていない可能性が出てくる。

    一般に、1日に体重1kgあたり0.75gタンパク質を摂取すれば体内の窒素バランスは改善するものの、グリシンのような非必須アミノ酸を生産するには、このレベルのタンパク質摂取量では不足する可能性がある。そのため、近年は「グリシンを必須アミノ酸にしようぜ!」と提案する科学者もいる。

    ただし、現時点では、コラーゲンとグリシンを同じように摂取した場合と、グリシンを単独で摂取した場合を比べた研究がないので、本当にグリシンのメリットなのかどうかは不明。

 

 

  • コラーゲンが体に良い(可能性がある)理由2:そもそも体内にコラーゲンが足りていない人が多い

    昔ながらの食生活はボーンブロスや煮込み料理などが多かったため、今よりも食事から摂取するコラーゲンの量が格段に多かった。しかし、加工食品が増えた現在では、コラーゲンの平均的な摂取量は減少しており、コラーゲンのサプリメントが効果を発揮する理由だとも考えられる。

    なにせ平均的な現代人は、食事でコラーゲンを大量に摂取していないので、その場合はコラーゲンのサプリでメリットが得られるのは当然だと言える。

 

 

ってことで、これらのポイントを見てみると、やはり「肌や筋トレにはそれなりのメリットがあるのかなー」ってとこですね。まぁ個人的には、それでもホエイプロテインを大量に飲んでいれば、そこまで困ることもないだろうと思ってまして、あえてコラーゲンのサプリを飲んだりはしておりません。とはいえ、コラーゲンの体内量が少ない人であればメリットを得られそうなので、気になる方は試してみてもいいんじゃないかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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